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会津会の新年会に行ってきました(1)〜講演会〜 [会津会]

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1月19日(月)17:00からの会津会の新年会に行ってきました。会場は上野精養軒でした。まず17:00から講演会「最新の宇宙像と会津の星空」があり、18:00から新年会となりました。今回は講演会について報告します。

「最新の宇宙像と会津の星空」
講師の渡部潤一先生(写真)は会津若松市出身で、東京大学理学部天文学科卒。現在は国立天文台副台長でいらっしゃいます。作家の渡辺淳一氏と読みが同じで肩書きも文学者と文学者で一文字違い、との自己紹介されるなどユーモアあふれる楽しいお話でした。
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渡部潤一(わたなべ・じゅんいち)先生。
*会津では「渡部」を「わたなべ」と読む名前の方が多いそうで、この日私の隣の席の方も渡部(わたなべ)さんでした。東京の方では「わたべ」さんと読む方が多いですよね。

私がメモした範囲で内容をご紹介します。

■宇宙像の変遷
私たち人類が宇宙をどう考えてきたかというお話で、世界の中心であるという天動説、太陽を中心とする地動説、銀河を宇宙の中心とする銀河モデルを経て、最新のビッグバン膨張宇宙モデルではどこが中心と定めることはできず「宇宙に中心はなかった」のだそうです。

■太陽系の最新像
望遠鏡の発達で、肉眼で見える土星(15億km)の外側の天王星(30億km)、海王星(45億km)、冥王星(66億km)が発見されていきました。のちに冥王星より大きな天体が見つかり、惑星の定義を明確化することが必要になりました(それまで明確に定義されていなかった!)。2006年、世界から7人のメンバーが集まり、惑星の定義を定め、その結果、冥王星は惑星から外されてしまいました。

ここで最新の3DのCGを使って(マウスで自由に動かして)、地球から太陽系を離れてどんどん外側に移動していく情景を映像でみせていただきました。地球は銀河系でも中心からやや外れたところに位置して、「東京を中心だとすると会津若松あたり」とのこと(笑)。壮大な宇宙の姿を見せていただき、果てしなく広がる宇宙の中では地球がいかに小さいかを感じました。

■宇宙のほとんどは正体不明
宇宙を構成する物質の23%がダークマター、73%がダークエネルギー、4%がふつうの物質(地球上にもある物質)とのことで、実に96%が正体不明なのだそうです。宇宙にはまだまだわからないことが多いのですね。

2013年、NHKのトップニュースで、ロシアのチェリヤビンスクに隕石が落ちて1500人もの人がまばゆい光を見たり爆発音を聞いたりしたと報じられました。実はその翌日は小惑星が接近するとわかっていて、先生はそちらの準備に追われていたところで、急遽コメントを求められたそうです。その結果、2/15のチェリヤビンスク隕石落下の件と、2/16に小惑星の接近について、30分のニュース番組に先生が2回登場することとなったのです。小惑星についてはあらかじめ録画したもので背広姿、一方隕石については急遽コメントを求められたため普段着で、みた人から「どうして途中で着替えたのか?」と言われたとか。隕石の落下は予想できないため、このようなハプニングが起こったのだそうです。

最近では、アイソン彗星もトップニュースになりました。アイソン彗星は太陽に接近しても消えずに大彗星になる可能性があると期待されていたのですが、予想に反して消滅してしまい、それがトップニュースになったということです。おかげで猪瀬都知事の5000万円借用問題がトップから外れてしまったと(笑)

アイソン彗星には大きな期待が寄せられていて、飛行機からみるツアーがあったり、特別番組が組まれたり、先生ご自身も「巨大彗星-アイソン彗星がやってくる」という本を書かれていたのに、「おかげで返品の山です」とのジョークも。アイソン惑星について聞かれ、先生は「宇宙の色んな現象の予測は難しいと逆に知ってもらういい機会になったのでは?」とコメントされたとのことです。番組の中で、先生がツイッターでアイソン惑星の思いもよらない振る舞いについて詠まれた短歌も紹介されたそうで、フォロワーが増えたと思ったら短歌について指導が入るようになった(笑)と冗談をおっしゃりながら、宇宙への関心が高まったことを喜んでおられるようでした。

■妖霊星
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一昨年の大河ドラマ「八重の桜」の第4回に「妖霊星(ようれいぼし)」として彗星が登場しました。この時代には3つの明るい彗星が出て、そのうちのひとつドナティ彗星がとりあげられたとのことです。「八重の桜」では、ヒロインの八重が彗星をみつけ「何かの前触れだべか?」と問うと、未来の夫となる川崎尚之助が「妖霊星なんてただの迷信ですよ。天体の働きに過ぎません。」と説明します(ビデオで確認)。先生はこの場面の時代考証はあっているといいます。当時の知識人は天文学の知識があり、天体観測さえしていたからです。でも、彗星の描き方はまちがっているとのことです。「八重の桜」は横向きですが(上の画像。ビデオより。)、この時は夜で太陽が沈んでいるので、下から上へ尾がのびているはずなのだそうです。

*参考:ドナティ彗星(Wikipedhia)
こちらにイラストがありますが、確かに尾が上にのびています。

天地明察」(冲方丁著)にも、江戸時代の天文や暦について書かれています。水戸藩、会津藩、薩摩藩などは藩校で暦学を伝授し、観測もしていたそうです。

ここからが重要なのですが、幕府や水戸藩、薩摩藩、阿波藩などの天文台は今は説明板のみだったりして現物は残っていませんが、会津藩の天文台が唯一、日新館にその石垣が残されているのです。観台と呼ばれるところです。先生は、日本ではまだ1件も登録がない「世界天文遺産」に是非登録したいと考えていらっしゃるそうです。

■福島、会津の星空
福島、会津は美しい星空が残されています。天の川がみえて、雲が黒くみえるような夜空が広がっています。(雲が白くみえるのは地上の灯りを反射している光害によるもの。)ここで空からみた夜の地球の映像が紹介されます。空からみると、日本列島は明るく、中でも特に東京が明るくなっています。会津でも若松や坂下は比較的明るいですが、南会津は暗くなっています。そのことから、天文台を持っている宿泊施設もあり、星を眺めるのによいところなのだそうです。日本人は星を観るのが好きらしく、プラネタリウムの観客動員数はJリーグの観客数を超えているそうです。

今から20年以内に別な星に生命の痕跡をみつけられるようになるそうです。そのための大きな望遠鏡を作成中とのことです。第二の地球になり得る星も1億個くらいはあると考えられています。いずれ他の星とコンタクトすることになるでしょう。地球の中では宗教や民族で対立していますが、他の星の文明はたぶん地球よりもかなり進んでいるはず。日本人の柔軟性(クリスマスのあと、初詣に行くような。笑)こそが、全く異なる文明を理解できるはず、と先生は力説します。

■星を見上げて
2011年3月11日に東日本大震災が起こりました。先生は被災地の人たちに何かできないかと考え、望遠鏡を被災地に持って行き、星をみせてあげるなどの活動をなさったそうです。

さらに、被災地の人たちのためにあることを思いつきます。それは小惑星に名前をつけることです。小惑星はみつけた人が名前を提案できるのだそうです。2011年の国際会議は震災のために流れてしまい、2012年の国際会議の時に、復興を応援する意図で被災地名を小惑星の名前にしたいと提案されたそうです(発見者はアメリカの方ですが、その方と協議をしながら決定したそうです)。

命名された名前は、青森、岩手、宮城、千葉県、茨城、栃木、浜通り、中通り、会津、陸前高田、栄村、津南町の12個。福島県だけ、浜通り、中通り、会津と3つも入っているのは、先生の郷土愛の表れでしょう。当日のパワーポイントの資料ではこのようにおおよそ北から順に書かれていたと思うのですが、国立天文台のホームページにはAizuが一番上に書かれています。おそらく小惑星の番号?の順なのでしょうが、会津関係者にはうれしいことですね。同じページでそれぞれの小惑星の画像も見れます。

*参考:国立天文台ホームページより
天文学者、復興を星に祈る:被災地名などを小惑星に命名(2012年5月 9日)

先生は、小惑星に地名を入れることで、星空を見上げて欲しいと思ったとのことです。それはうつむきがちになっていた人々を励ましたいということなのでしょう。

最後に「次の大彗星は空の1/3もの尾を引くハレー彗星なのでみなさん楽しみにしていてください」と。それは楽しみ!と思ったところで、「それが来るのは2061年です。」と(笑)。「その頃にはここにいらっしゃる大半の方が星になっているでしょうから、空の上で会津会をしましょう」と。最後まで楽しいお話でした。


私の感想ですが、天文のことをあまりよく知らなくても、写真や映像やジョークを交えたお話はとてもわかりやすく、楽しく、星を眺めてみたくなるような内容でした。会津の星空が美しいという話もありましたが、私の父の故郷の山都町では、田んぼの方などへいくと夜は真っ暗で、まばゆいばかりの星空に感動したのが子どものころの思い出です。星の光と暗い部分とどっちが多いかわからないくらい、星がたくさん見えたのです。最近は夜まではいないことが多いので星空をみる機会はありませんが、基本的には私が子どものころみた光景と変わっていないのではないかと思います。東京では夜でも明るいので、数えるほどしか星が見えません。いつかまたあの星の方が空より多いような星空をみてみたいと思いました。

渡部先生の会津への思いもよく伝わってきました。空にはAizuという星が輝いていると思うとうれしくなります。また、会津藩の天文台が世界天文遺産になったらいいなと思います。そして「天地明察」の話題も出ました。映画にもなったそうで、ある方に勧められて本を読み始めましたが、雑事に追われて中断中なので、そのうちちゃんと読みたいと思います。

渡部潤一先生、ありがとうございました。

・「天地明察」
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  • 発売日: 2009/12/01
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渡部潤一

詳細なご報告、ご紹介をいただき、ありがとうございました。
by 渡部潤一 (2015-01-29 18:39) 

himika

★渡部潤一先生
お忙しい中ご覧いただきありがとうございました。
とても楽しいお話でした。
東京ではなかなか星はみれませんが、
先生のお話を思い出しながら
空を見上げたいと思います。
by himika (2015-02-02 03:21) 

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